中村敏彦
Are You Experienced?
中村敏彦のおすすめ商品
-
SOLD OUTおうちで蒸しや焼きで牡蠣小屋しながら、ホタテも楽しんじゃおう!というセットです。
-
SOLD OUT
-
SOLD OUT
-
SOLD OUTプリッとふっくらした食感に貝の旨味がぎゅっ!っと詰まったムール貝
-
SOLD OUT地元ではおなじみの隠れた特産品。たっぷり3kgをご用意!
-
SOLD OUT地元ではおなじみの隠れた特産品。
-
SOLD OUT120サイズでお届けします。
「山田を売りたい、知ってほしい」
震災を経て強まる思い
強面な漁師の多い三陸にあって、ひげ面に人懐こい笑みを浮かべた姿がひときわ印象的な中村敏彦さん。
東日本大震災の後、さまざまな挑戦の背中を押すのは、
海産物だけでなく「山田を売りたい、もっと知ってほしい」との強い思いだ。
30代から新たな挑戦
お客様の声から学び、奮起
中村さんの「明神丸」は由緒ある船名だ。山田湾を見下ろす湾口には古くから明神様が祀られ、沖に出る船は海上から手を合わせたのだという。明神丸は中村さんで3代目。高校卒業後、2年間会社勤めをした後、父の手伝いから始めて養殖の道に入った。震災の翌年に亡くなった父とは若いころはしょっちゅう衝突した。「でも親父に教わったことが今も生きているんです」。
亡くなる少し前まで漁に出ていた生涯漁師の父親に学びながら、30代のころから独自の挑戦も始めた。それが、まだ出始めだったインターネット通販での牡蠣の販売だった。牡蠣の最盛期には、夕方6時ごろまで牡蠣やホタテの生産や出荷の作業をした後、出品や全国の顧客への対応のため夜中の1時過ぎまでパソコンに向かい、早朝には漁に出る日々が続いた。それまでは漁協にまかせっきりだった出荷作業や価格設定を自分で行った経験が今の糧になっている。
全国からの「美味しい」という声は励みになった。「でもいちばん勉強になったのは、全国の牡蠣を食べ比べている、お客様の声でした。『余所の地域の牡蠣はこうだったよ』といった意見を聞いて、他の産地を知るべきだ、もっと良い商品を作らなきゃと奮起しました」。船上での作業に追われながらも、どんな声にも返事を打ち続けた。
明神丸 かき・ほたてきち
販路開拓に向けて試行錯誤を続けていた2011年。巨大地震が起きた時、中村さんは海の上の養殖いかだで作業していた。船上にいても尋常ではない揺れだということが分かった。船を避難させるため、何隻かの船が港より安全な湾内に出てきた。湾の入り口が狭い山田湾の真ん中はいつものように静かなままだったが、遠くに見える大沢地区の防波堤に何かがぶつかり土埃が上がるのが見えた。想像を超える大津波。深夜には街なかで火の手が上がるのが見えた。散乱した養殖いかだに船の行く手は阻まれ、陸に戻れたのは翌日の朝だった。かろうじて家族は無事だったが、自宅や養殖のための作業場は流されてしまった。港には3日前に購入したばかりの新しい明神丸が係留されていたはずだった。
「船はどこだ」。──壊滅的な大沢を目の当たりにし、明神丸も諦めかけたが、近くのガソリンスタンドだった場所から見つかり、修理可能なことが分かった。
「また漁師をやるしかない」。
がれきとなった街の中からまだ使えそうな養殖資材を探して歩いた。午前中は大沢の漁師たちと復旧に向けた作業に汗を流し、消防団員として捜索作業にも当たった。精神的にも厳しい状況で、中村さんの支えになったのが秘密基地づくり。漁港にあった自身の作業小屋の部材などを見つけては小さな小屋を作り、薪ストーブを置いた。気づけば、漁師が集まってコーヒーを飲む癒しの場となった。「明神丸 かき・ほたてきち」の始まりだった。
海産物をきっかけに山田に来て体験してもらいたい
ネット通販などでつながった全国の顧客も中村さんの復活を後押しした。「全国から支援物資が届いて……これは漁師をやめちゃいけないなって思いました」。漁協が創設した「復興カキオーナー制度」を通じて寄せられた支援などによって養殖いかだや荷捌き施設の復旧も進んだ。
震災前は持ち前の負けん気で「ほかの漁師よりいいものをたくさん売りたい」と働いてきたが、震災後は「生まれ育った山田を全国に売りたい」という気持ちで動くようになっていた。「味って味覚だけでなく五感で感じるものだと思うんです。居酒屋でもマスターの人柄や店の雰囲気も大事でしょ。美味しい牡蠣やホタテを食べるだけでなく、作っている山田に来て体験してもらいたい」。養殖いかだを見学するクルーズを今後はもっと広めたいと考えている。
子どもがあこがれる漁師を増やしたい
挑戦を続ける中村さん。次なる挑戦は、山田の牡蠣に合うワインづくり。もちろん自身がワインをつくるわけではないが、ワイン販売会社を営む同級生を応援するためワインを山田湾の海底に沈める作業に協力し、同級生らとともにスペインのワイン産地と牡蠣養殖現場の視察に赴き、山田産牡蠣とワインのコラボレーション実現を想像して胸を躍らせた。
「今は漁師の担い手は少ない。でも漁師が楽しそうに仕事をしてる様子を山田の子どもたちに見てもらって、子どもたちがあこがれる漁師を増やしていきたいですね」。ひげ面いっぱいに笑顔を浮かべた。